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留学記

 

苗 瑞峰 中国内モンゴル自治区包頭市出身

修士一年生 経済思想史専攻

中国語版

201105

 

 

 


 

私は、高校の時から、言語に特別な興味があり、大学に入ったら、言語学を勉強しようと思っていた。そして、高校二年生の時に、「日本留学」という言葉に出会った。中国人留学生であったプロデューサの張麗玲さんが制作し、中国本土で大ヒットした『私たちの留学生活―日本での日々』を見て、日本の留学生活を初めて知ってきた。日本留学の大変さは番組を通じて知ったが、自らを鍛えるチャレンジの場だと確信し、どうしても自分で体験してみたくなった。

 それから、大学では、日本語を専攻し、その時から、日本語の文法や表現方法、日本の小説、歴史などを学び始めた。日本語そのものは、おもしろかったが、難しい日本の小説や歴史、社会など、理論的なことを勉強するとなると、少しずつ飽き始めてきた。単純にそれらは、高校の時のように、試験が近づくと必死に覚えて単位を取るためのものになりつつあった。一国の言語はその国の全てであり、すなわち、歴史、社会、文化を反映するものだと言われる。その国の全般的な事情を分からずに、その国の言語のみを勉強するのは、最初からとうてい無理なことだったのである。そして、大学二年の前期が終わる頃、よい機会に恵まれた。いろいろな選考試験(筆記試験と面接試験)を受け、日本の中央大学で、交換留学のチャンスを得った。(中央大学との交換定員は1名である)

 20089月、私はとうとう日本留学への旅に立った。成田空港から住まいの場所まで2時間ぐらいかかったが、私にとっては、自分の目でこの新しい土地をじっくり見つめるための有難い2時間であった。薄雲の空、立ち並ぶ高層ビル、綺麗な街角。。。電車の窓から見た東京は閑静な雰囲気が漂う都会だと思った。一年間の住まいは留学生会館で、色々な国の人がいて、テレビを通じても、まだ聞いたことのない言葉が賑やかに飛び交う所であった。豚肉を食べないマレーシア人や、牛肉を食べないタイ人や、空手が大好きな南アフリカ人など。トイレ、キッチン、シャワー室は共有で、皆がまるで大家族のように暮らしていた。もちろん、たまに問題が起こることもあるが、互いに文化や習慣を尊重しながら、問題を解決していくことができた。国際的なコミュニケーションも私たち留学生の日常生活の一部であった。この環境のおかげで、色々な国の人に出会い、たくさんの面白い話や、多様な考え方を知り、本当に世界は広いなあと実感した。当時付き合っていた友達は、かけがえのない存在である。今でもいつも連絡を取り合って、たまにインターネットでチャットしたりしている。留学生会館が与えてくれたのは、それまでに経験したことのない異文化交流、それに家族のような思いやり、尊い友情、大切な国際的な考え方であった。初めて来日した日、電車の窓から見た閑静な東京は、本当は開かれていて、包容力のある都会だと思った。

 中国の留学生にとって、日本の物価が非常に高いので、アルバイトをしなければやっていけないのが厳しい現状である。だから、親の負担を軽くするために、アルバイトの体験も私の留学生活の一部であった。アルバイトは日本社会を知る手段の一つであると同時に、仕事仲間や色々な人々との触れ合いを通じて、実生活の中の生きた日本語を習い、日本の歴史、文化、風俗習慣をよく理解し、現地社会に溶け込む機会をもたらしてくれた。私は最初に飲食店でアルバイトをした。覚えることが多くて大変であったが、先輩たちが親切に教えてくれたおかげで、すぐに慣れた。しばらくすると、ドリンクの調合や、レジや、オーダーなどまで何でもこなした。学校で習わなかった日本語のくだけた言い方や、他人の立場を思いやる気持ちなども身につけることができた。

 一年間の交換留学生活は、あっという間に過ぎた。それを通じて、視野を広げることができた。文化や習慣の違うたくさんの友達と触れ合い、日本人の価値観、人生観などに至る精神的なものを更に深く理解できてきて、とても貴重な体験ができた。一年間の交換留学が終わってから、中国の大学に戻って、大学四年卒業生になった。そして、四年生恒例のインターンシップをした。ある旅行会社での二ヶ月のインターンシップを通じて、自分がまだ知識不足だと感じた。言語学の知識のみでは不十分であり、それ以外の知識を学び、言語知識を活かして、もっと勉強したいと思い、自分の能力が発揮できる限界に挑戦したいと思うようになった。そこで、興味を持っている分野の経済知識を学び、国際協力などに秀でている日本へ、また留学することを決意した。

 北海道大学に来てから、もう半年以上が経った。橋本先生のご指導の下で、ゼミを参加し、勉強会や小テストを通じて、経済思想のシステム理論をしっかり勉強した。今は、修士一年の課程を在籍している。私は、大学院を卒業したら、日本で就職したいと思っている。そして、いずれかの日にか国に帰って、日本で学んだことを中国で実践してみようと考えている。日本での留学生活は、中国と違う社会を知り、日本と中国を比較することによって、今の中国社会を客観的に評価できるという点で、非常に意義あることである。特に現在非常に速い変化を続けている中国においては国の違いによる社会の相違のほか、時代の変化に伴う社会構造の大きな変革もあるので、これらを通じて、より幅広い価値観をもって今の中国社会を見極めることができるのではないか、と思っている。また、一人の日本企業での経験者として、国内企業に日本で学んだ貴重な経験を伝授し、現地の日本企業と一緒に中国市場での異文化コミュニケーションを探求し、両国の企業を結びつける橋渡しの役割を果たしたいと思う。さらに、留学経験者として、将来、中国の大学の教壇に立って、私と同様な目標を持つ情熱のある青年達に私自分自身が経験してきたことを伝えたいのである。これも日本留学に対する最高の社会への恩返しであろう。これらの理想が現実となることを夢見つつ、私はこれからも一日一日を大切にして日本での掛け替えのない学生経験を積み重ねていきたいと思う。

 最後に、日本に来てから出会った先生たち、先輩たち、友達に、心から感謝したいと思う。生活や、勉強など、いろいろな面でお世話になっている。本当にありがとうございます。

 

                             以上