ゼミとは何か

学問との出会い。友との出会い。師との出会い。

ゼミはドイツ語のSeminar(ゼミナール)の略で,英語ではセミナー,日本語では演習といいます。北大経済学部では3,4年生の全員が2年間,自分で選んだゼミに所属します。 ゼミは1学年あたりの定員が4~7名と少人数です。そこでは,各自の研究テーマについて,活発な議論がおこなわれます。与えられた学問ではなく,自分自身が興味を持ったことを深く掘り下げて研究するところ,それがゼミなのです。

ゼミで出会い,2年間ともに議論をたたかわせた同期生や先輩や後輩は,大学卒業後も利害関係抜きでつき合い続けられる,本当の友人です。そして,専門分野のエキスパートであり,しかも個性的で魅力的な教授たちとの出会いは,皆さんの学生生活をもっとエキサイティングなものへと導いてくれることでしょう。

経済学部のゼミで,あなたもわくわくするような出会いをしてみませんか。

ゼミのルーツ

本学部の教育体制の大きな特徴は,ゼミ(演習)を核とした少人数教育という良き伝統にあります。元来,講義と区別される演習という制度の日本における創始者は新渡戸稲造と言われています。
新渡戸が札幌農学校の教務部長だった1895年,カリキュラム改革の一貫として,理科系の実験に相当するものとしての演習を文科系の教育にも取り入れたのが最初だと伝えられています。

岡野ゼミ [会計学]

社会を聴く 知を深める

私の専門は会計学,とくにその中でも監査論が専門です。監査(audit)とは,簡単に言うと,誰かが誰かの行為や主張をチェックすることですが,その語源は,オーディオ(audio)や聴衆(audience)と同じ,「聴くこと」にあります。考えてみれば,私たちは日々たくさんの物事を監査しています。買い物をすれば,おつりの金額が間違っていないかレシートをチェックし,時間があればSNSをチェックし,部活やサークルで会費が徴収されればそれが適切に使われたかどうかチェックし,草野球をするときは審判にセーフ・アウトをチェックしてもらっています。こうした監査の中には,不正を抑制したり,やる気や対話を促進したりするものがある一方,負担を増やし,逆に不信感を生み,やる気を削ぐものもあります。良い効果を生み出す適切な監査を実施するには,それぞれの監査が行われる状況や,そこでの人々の声をよく聴き,理解する必要があるのです。
ゼミでは,毎年,学生たちの興味関心を踏まえて,会計学・監査論分野のテキストを選択し,輪読・議論していきます。ゼミ生それぞれのバックグラウンドや興味関心,価値観は様々ですので,時には議論の中で意見が食い違ったり,瞬間的に拒絶したくなるような意見に出くわす場面もあるかもしれません。そういう時こそ,すぐに反論・拒絶したくなる気持ちを少し抑えて,その人の意見をよく聴いてみてください。自分とは正反対の意見だと思っていたものの中には,実は納得できる部分,意外と自分と近い部分,興味深く面白い,新しい視点が含まれているかもしれません。
大学を卒業したその後の人生で,ゼミで使ったテキストの内容自体(知識)が直接役に立つ,という場面はおそらくそれほど多くはないでしょう。しかし,そのテキストを輪読し,議論していく中で培った,相手の言葉をよく聴き,理解する力は,きっと皆さんを様々な場面で助けてくれるはずです。

岡野 泰樹 准教授

岡野 泰樹 准教授

岩手県出身。2012年明治大学商学部卒業。2017年北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。2020年より北海道大学大学院経済学研究院准教授。主要業績「統合報告書に対する保証業務の実態とその理論的検討」『現代監査』No.28,2018年。平成30年度日本監査研究学会監査研究奨励賞受賞。

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