経済学は「文系」の対象を
「理系」の方法で科学する
経済学部准教授 五十嵐洋介

見つめる対象は社会,人,そこで起きるさまざまな現象

「どうして経済学を勉強するのか?」 この質問にすぐ答えられる人は意外に少ないかもしれません。経済学には,歴史,統計,環境,金融,政策……と多様なトピックがあり,私たちが暮らす社会のすべてが分析対象となりうる。ですから,経済学を勉強する理由もさまざまありうると思います。

私の場合,高校生の頃から数学はわりと好きだったのですが,物理や生物の実験はあまり好きになれませんでした。その点,経済学は数式を用いた理論やコンピュータによるシミュレーションなど,理系のスキルを身につけながら,つねに社会と接点をもつ学問です。いわば理系と文系の二刀流。自分にぴったりだと思いました。

理論を用いて社会の動向を捉え,将来の予測に役立てていきたい。それが 経済学を勉強する今の私なりの理由です。北大経済学部に進学する皆さんも,ぜひ自分なりの理由を探してみてください。

それぞれの科目を結びつけ,自分で考える力をつける

経済学部にはたくさんの科目を学ぶカリキュラムがあります。一つ一つにレポートや試験があり,それらをしっかりクリアすることは重要ですが,もっと大切なことはそれぞれの科目を結びつけ,考える力をつけること,その訓練をすることだと思います。

たとえば,2008年にリーマンショックを引き金とした金融危機が起こりましたが、これは学問的にも大事件でした。経済学者はこれを経済史に登場する過去の事例と比較し,計量経済学の手法でデータを分析し,ミクロ経済学やマクロ経済学の理論でモデル化し,さまざまな政策の効果をシミュレーションする。これは一例に過ぎませんが,こんなふうに個々の科目の役割やつながりが分かってくると,経済学の勉強がどんどん楽しく興味深くなると思います。

そして,ここで培った力は,社会に出てからきっと皆さんの大きな武器になると思います。

五十嵐先生
プロフィール

埼玉県出身。東京大学経済学部(学士,修士卒業),米ペンシルバニア州立大学(Ph.D.)。英エクセター大学ビジネススクール講師を経て現職。