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北海道大学大学院経済学研究院/経済学院/経済学部

研究院長・学院長・学部長からのメッセージ

志高く,経済を学ぶ

北海道大学大学院経済学研究院長
平本 健太


わたしがまだ駆け出しの研究者だった頃,とある英文学の教授に “Man is social being.” という文を日本語に訳してみよ,と問われたことがあります。当時のわたしは,深く考えずに「人は社会的存在である」と答えました。すると「大学受験レベルならばそれでも正解だけれど,社会科学の研究者としては不合格だ」と切り捨てられました。では,どう訳すのか。教授は笑い宣(のたま)いました。「人はひとりでは生きられない」。なるほど,social being を社会的存在と直訳したところで本質的な理解にはなっていません。人間社会は自分と他人との相互作用においてはじめて成立するのであって,人は決してひとりで生きているわけではないのです。

経済という言葉は,「世を經(おさ)め,民を濟(すく)う」という意味の熟語である經世濟民を略したものです。ですから,経済は元来,経済学の範囲だけにはとどまらず「世の中(社会全体)をよくして人々を幸せにすること」をあらわす概念です。経済学研究院・経済学院では経済学,経営学,会計学,統計学をはじめとする非常に幅広い領域を扱いますが,それはまさに,社会全体をよくして人々を幸せにするための学問群です。

われわれが生きる社会は,とりわけこの数十年でとても複雑になりました。社会の複雑化にともない,社会をよくするための学問も高度化・細分化し,それら学問を研究・教育するわれわれの大学院も,時代の要請に応える形で変わってきました。2000(平成12)年の大学院重点化によって研究主導型大学院としての体制が確立し,2005年には「会計情報専攻」,いわゆる会計専門職大学院(アカウンティング・スクール)が新設されました。また,法学部を中心に設立された公共政策大学院に工学部と共に参画しています。さらに2011年には,「地域経済経営ネットワーク研究センター」を設立し,regional/ localの両面から地域の経済や経営を研究するとともに,グローカルな視点での地域社会への貢献を支援する体制を強化してきました。

2017(平成29)年度には,従来の経済学研究科を,教員が所属し研究を行う経済学研究院と大学院教育を行う経済学院とに改組しました。この結果,経済学研究院に所属する教員が経済学院以外の他大学院での教育にも携われるようになり,学生や社会のニーズの多様化により的確に応えることが可能になりました。この改組にともない,同年より農学研究院を主体に設立された国際食資源学院にも参画しています。近い将来には,他の学院への参画も予定しています。

複雑で移ろいやすい社会だからこそ,その本質を理解するための学問的知見がますます重要になっています。この社会をよくし人々を幸せにするための学問を身につけたい,そうした学問のいっそうの進歩発展のために貢献したいという高い志をもつ人々が,経済学研究院・経済学院に集うことを大いに期待しています。